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ホルムズ海峡閉鎖 ─ 美容業界への影響をまとめました

ホルムズ海峡閉鎖 ─ 美容業界への影響をまとめました

 

2026年2月末から続くホルムズ海峡の事実上の封鎖。「中東の話でしょ?」と思われるかもしれませんが、実はこの危機、美容サロンの仕入れコスト・商品供給・光熱費すべてに関わる問題です。本記事では、サロンオーナーの視点で「何が・なぜ・いつ頃影響するのか」を分かりやすくまとめました。


1. いま何が起きているのか──ホルムズ海峡危機の概要

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾と外洋を結ぶ幅わずか34kmの海の通り道です。ここを通って、世界の原油輸送の約20%、日本の原油輸入の約9割が運ばれています。

2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始。イランはこれに対する報復として、ホルムズ海峡の通航を事実上封鎖しました。

この結果、何が起きたか。タンカーの通航数は1日120隻から数隻にまで激減し、150隻以上が海峡の手前で立ち往生。原油価格はピーク時に1バレル126ドルまで急騰し、4月現在も100ドル前後の高値で推移しています。

4月2日には40カ国以上がオンライン会合で海峡の再開に向けた協議を行いましたが、先行きは依然不透明です。1970年代のオイルショック以来、最大のエネルギー供給障害とも評されています。

💡 ポイント

ホルムズ海峡が封鎖されると、原油だけでなく、天然ガス(LNG)や化学原料のナフサなど、日本の産業を支えるエネルギー・素材の流通が一斉にストップします。影響は「ガソリンが高くなる」だけの話ではありません。

2. 原油と化粧品の知られざるつながり

「原油が高くなると化粧品が値上がりする」と言われても、ピンとこない方が多いと思います。そこで、サロンで日常的に使う製品を例に、つながりを見てみましょう。

① 容器・パッケージ(プラスチック)

シャンプーのボトル、トリートメントのチューブ、美容液のジャー容器──サロンの棚に並ぶ製品のほとんどは、プラスチック容器に入っています。このプラスチックの原料がナフサ。ナフサは原油を精製して得られる石油製品です。原油が手に入らなければ、ナフサが作れず、プラスチックが作れず、容器が作れません。

② 化粧品の中身(石油化学原料)

化粧品の成分表をよく見ると、石油由来の成分がたくさん含まれています。代表的なものを挙げると:

  • シリコーン(ジメチコンなど):ヘアトリートメントやファンデーションの滑りをよくする成分
  • 界面活性剤(ラウレス硫酸Naなど):シャンプーの泡立ち成分
  • 合成ポリマー(カルボマーなど):ジェルやクリームのテクスチャーを作る成分
  • ミネラルオイル:ベビーオイルやクレンジングの基剤

これらはすべて、ナフサから生まれるエチレンやプロピレンなどの「石油化学基礎製品」から作られています。

③ 製造・物流のエネルギー

工場を動かす電気、製品を届けるトラックの燃料。これらもすべて原油・天然ガスに依存しています。日本の発電の約60〜65%は火力発電であり、燃料の大半を海外から輸入しています。

つまり、化粧品は「中身」も「容器」も「届ける手段」も、すべて石油なしには成り立たない製品なのです。

3. 「ナフサ」とは何か──化粧品容器が消える理由

ここからは、メルマガではお伝えしきれなかった「ナフサ問題」について掘り下げます。

ナフサとは、原油を精製する際に得られる液体の一種で、見た目は透明。日常生活でそのまま目にすることはまずありません。しかし、これがプラスチック・合成繊維・合成ゴム・塗料・洗剤など、あらゆる石油化学製品の「大元の原料」です。

ナフサを高温で分解すると、エチレン・プロピレン・ベンゼンなどの基礎化学品が生まれ、そこからポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのプラスチック樹脂が作られます。

⚠️ 日本のナフサ調達の現実

日本国内で使われるナフサのうち、約8割が中東由来です(ナフサとしての直接輸入+国内で中東産原油から精製する分を合わせて)。そしてナフサは揮発性が高く危険なため、国内に備蓄がほとんどありません。石油化学工業協会によると、ナフサ自体の在庫は2〜3週間分程度とされています。

東洋経済の報道によれば、ナフサ分解工場の稼働は4月まではなんとか維持できる見通しとのことですが、ゴールデンウィーク以降の確保は各社の調達努力次第。石油化学工業協会の会長も「歴史上、ホルムズ海峡が全面的に封鎖されるという経験はまずもっていなかった」と述べており、前例のない事態に直面しています。

ナフサが不足すれば、まず「川上」のプラスチック樹脂の生産が減り、それが「川下」の容器メーカーに波及し、最終的に化粧品メーカーが製品を作れない──という連鎖が起こります。

4. 化粧品メーカーへの影響──値上げと供給不安

すでに海外では、具体的な影響が報じられ始めています。

🇰🇷 Yonwoo社(韓国・化粧品容器メーカー)
ロレアルやアモーレパシフィックなどKビューティー企業に容器を供給する同社は、スキンケアや化粧品用のジャー容器を製造するためのプラスチック樹脂の確保に奔走しており、6月以降の調達見通しが立っていないと報じられています。

🇰🇷 韓国プラスチックフィルム工場
ある老舗工場では、仕入先が一部原材料の価格を最大50%引き上げる一方、在庫切れのところも出ており、生産を通常の20〜30%にまで落としています。

🇯🇵 国内プラスチックメーカー
卵のパックなどを製造するRP東プラでは、原材料価格が約4割上昇。「2〜3ヶ月分の在庫で生産は可能だが、場合によっては生産ラインがストップする影響が出てくる」と警戒感を示しています。

これらは化粧品に限った話ではありませんが、化粧品は特にプラスチック容器への依存度が高い製品です。中身をいくら作れても、入れる容器がなければ製品として出荷できない──この「容器ボトルネック」が、今回の危機で最も注目されているポイントです。

また、2022〜23年の原料高局面でも、化粧品業界では相次ぐ値上げがありました。今回は原油価格の上昇幅がそれ以上であり、加えて物理的な供給不足という新たな要素が加わっています。値上げだけでなく、欠品や入荷遅延のリスクも現実味を帯びてきています。

5. サロン経営への3つの影響

では、実際にサロンオーナーにとって何が変わるのか。大きく分けて3つの影響が考えられます。

影響① 仕入れ商品の値上げ

メーカー側で原料・容器・物流コストが上がれば、その分が卸価格に転嫁されます。美容室経営者の7割以上が仕入れ価格の上昇が経営に影響していると回答している調査データもあり、コスト上昇はサロン経営を直撃します。一方で、71%のサロンが顧客離れを恐れて料金据え置きで対応しているとのデータもあり、利益率の圧迫が懸念されます。

影響② 欠品・入荷遅延

容器不足によるメーカー側の生産調整は、特定の商品が一時的に手に入らなくなるリスクを意味します。特に海外製造品や輸入原料に依存するブランドでは、影響が早く出る可能性があります。いつも使っているシャンプーやカラー剤が「メーカー欠品中」になる事態も想定しておくべきでしょう。

影響③ 光熱費の上昇

美容サロンは水や温水を多用するため、光熱費が経営コストの中で大きな割合を占めます。燃料費調整制度により、原油・LNG価格の上昇は3〜5ヶ月のタイムラグで電気料金に反映されます。今回の原油高騰の影響は、最短で6月使用分(7月請求分)から電気料金に出始める見込みです。さらに、4月から電気・ガスの政府補助金が終了しているため、ダブルパンチとなる可能性があります。

6. 影響が出るタイムラインの目安

「いつ頃から影響が出るのか?」──これが最も気になるところだと思います。あくまで目安ですが、過去の事例と今回の報道を踏まえて整理しました。

時期 予想される影響
4〜5月
(現在)
ナフサ分解工場の稼働がギリギリに。プラスチック樹脂メーカーが在庫を取り崩している段階。サロンへの直接影響はまだ少ない。
6〜7月 電気料金に燃料費高騰が反映開始。容器メーカーの樹脂在庫が底をつき始め、化粧品メーカーの一部で生産調整の可能性。メーカー値上げの告知が出始める時期。
8〜10月
(要警戒)
メーカーの価格改定が卸価格に反映。特定商品の欠品や入荷遅延が表面化。電気代・ガス代の上昇がサロンの固定費を押し上げ。
2026年末〜 海峡封鎖が長期化した場合、サプライチェーン全体の構造的なコスト上昇が定着。複数回の価格改定の可能性も。

※上記はあくまで一般的な目安です。海峡の再開時期や各メーカーの在庫状況、政府の対応策によって大きく変わる可能性があります。

7. サロンオーナーとしてできること

国際情勢を変えることはできませんが、情報を知った上で早めに動くことで、影響を最小限に抑えることはできます。

✅ 定番商品の在庫を確認する

普段使いのシャンプー、カラー剤、スタイリング剤など、施術に欠かせない定番品の在庫を改めて確認し、余裕のある仕入れ計画を立てておくと安心です。特に、海外ブランドや輸入原料に依存する製品は早めの手当てを検討しましょう。

✅ 代替品を調べておく

万が一の欠品に備えて、普段使っている製品の代替候補を把握しておくことも大切です。同じカテゴリの国内生産品などをリストアップしておくと、いざというときに慌てずに済みます。

✅ 値上げを「説明できる」準備をする

もしメニュー価格の見直しが必要になった場合、お客様に対して「なぜ値上がりするのか」を具体的に説明できることが大切です。「世界情勢の影響で原材料費が上がっている」ではなく、「中東の海峡が封鎖されて、シャンプーボトルの原料であるプラスチック樹脂が不足している」と具体的に言えると、納得感がまったく違います。

✅ 光熱費の見直し

電気料金の上昇が見込まれる今、電力契約プランの見直しや省エネ対策を検討するタイミングでもあります。LED照明への切り替え、エアコンの効率的な運用、タイマー付き機器の活用など、できることから取り組んでみてください。

8. まとめ

ホルムズ海峡の封鎖は、一見するとサロン経営とは無縁の出来事に思えます。しかし、化粧品という製品が石油に深く依存している以上、その影響は数ヶ月のタイムラグを経てサロンの経営に届きます。

今回の危機がいつ収束するかは誰にも分かりません。ただ、美容業界でもいつ値上げが始まってもおかしくない状況にあることは確かです。私たちBI-PROも、メーカーからの価格改定があれば対応せざるを得ない立場です。

だからこそ、世界情勢も踏まえて、必要な商品の仕入れタイミングをご検討いただく一つの材料にしていただければ幸いです。

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※本記事は2026年4月3日時点の報道および公開情報に基づく情報提供を目的としたものであり、特定商品の購入を推奨するものではありません。情勢は急速に変化しており、最新の状況と異なる場合があります。

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